灰色の風景と覇気のない人々、陰鬱ながら良質なサスペンス

今回ご紹介するのは2003年のイギリス映画「猟人日記　禁断のエロス」（原題：Young Adam）。

 

 

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あらすじ

50年代グラスゴーの運河。作家志望のジョーは小さな貨物船の住み込み船員として、船の所有者レズリーとその妻エラ、息子のジムと暮らしていた。ある朝、ジョーは流れてきた水死体を引き上げる。薄いペティコートを纏っただけの若い女性。この事件は新聞で取り上げられ世間を騒がせる。ジョーは誰にも打ち明けようとしなかった。その女性キャシーと、かつて恋仲にあったこと、そして死体発見の前日に偶然の再会を果たしていたことを…。【Huluより引用】

 

予告動画

 

登場人物・キャスト

ジョー・テイラー

✅演：ユアン・マクレガー
✅役柄：レズリーの元で船に住み込みで働く雑役人

 

キャシー

✅演：エミリー・モーティマー
✅役柄：ジョーの恋人

 

レズリー

✅演：ピーター・ミュラン
✅役柄：船の所有者でエラの夫

 

エラ

✅演：ティルダ・スウィントン
✅役柄：レズリーの妻

 

 

原作

Fab feedback on the Sharp book from contacts including Scottish Book Trust and Glad writers . Remember Alexander Trocchi? He’s part of it. pic.twitter.com/PUfj82RS64

— David Manderson (@Mandraxian) October 24, 2019

「猟人日記　禁断のエロス」の原作は、スコットランドの小説家アレクサンダー・トロッチ（1925年7月30日 – 1984年4月15日）の長編小説「Young Adam」（1954年）。

本作の舞台となったグラスゴーが、アレクサンダー・トロッチの出生地のようです。

 

 

 

 

大人向け作品なの？

Huluでは特に年齢制限はなく、ユアン・マクレガーやエミリー・モーティマーの堂々たる全裸には、しっかりモザイク処理（あるいは場面カット？）されていました。
※ネットで検索するとR-18表記されているサイトもあり

 

 

 

行為場面は多いですが、意外にも素早く切り替わるからアッサリ薄口系で、凝視するほどでもないかな（笑）

 

捨て身っぷりから女優魂を感じるティルダ・スウィントンや、エミリー・モーティマーの色気漂うキレイなボディーラインは見もの！

 

 

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感想

無害で寡黙なイケメンかと思いきや？

ちょっと久々に刺激的なのを観ましょうかとHulu開いた時、とんでもないタイトルに釣られたのが「猟人日記　禁断のエロス」でした。

サムネからもユアン・マクレガーとティルダ・スウィントン共演作と分かったし、味わい深そうだと早速視聴しました。

 

ややや、なんでしょうかコレは。

一言で言ってしまうと、誰一人として幸せになれない鬱映画ですかね。

 

作品の雰囲気としては、とにかく静かで暗くて重い。

生々しさと美しさの絶妙バランスは嫌いじゃない。

でも終始ユアン・マクレガー演じるジョーがクズ男すぎるっ！

 

責任感とやらは持ち合わせていないようで、次々女性を通して周りを破滅に追い込む人間でした（多分自覚無し）。

 

冒頭では人畜無害で読書好きな寡黙イケメンっぽかったけど、女性の水死体を発見したのを機にあれよあれよと下半身が暴走。

雇い主レズリー（ピーター・ミュラン ）の子持ちの妻エラ（ティルダ・スウィントン ）に、急に欲情しちゃって止まらなくなっちゃいます。

 

日頃からレズリーに不満があったエラは、罪悪感を感じながらもジョーに乗り換えちゃってもう引き返せない領域に突入。

ある時レズリーにバレて、ジョーが殴られ追い出されるかと思いきや、レズリーが出て行くという展開に。

 

 

エラは夢を持って貯金をしていて、ジョーと結婚しようと考えてました。

テッキリこの2人の人間ドラマなのかしらー？なんて思ってたら、後程触れるけど全然そこで終わらなかったからビックリ。

 

 

倫理観の破綻

ジョーって多くの言葉を交わさなくても、もう「目」と「口元」から煩悩が溢れ出してるのです（笑）

だからか、そういう相手を引き寄せるのかもしれませんね。

夫を亡くしたばかりのエラの妹（テレーズ・ブラッドリー）や、新しい住み込み先の赤ちゃんのママにも秒で手を出しちゃう。

だけどそこに情熱も感情も何もなく上の空。

単なる作業的なもので虚しいだけ。

 

どうしてこんな状態なのかは、水死体発見後のニュースや、元カノとの回想場面から浮かび上がって来るんですよ。

 

 

 

水死体は元カノだった

実は冒頭でジョーとレズリーが発見して引き上げた遺体は、元カノのキャシー（エミリー・モーティマー ）で、キャシーが死んだのはある意味ジョーのせい。

 

 

と言うのも偶然再会した2人は、その流れで肉体関係を持つんですが、キャシーから妊娠2ヶ月だと打ち明けられたジョーは真っ青に。

「自分以外の男では？」とシレッと突き放し、足早に立ち去ろうしますが、キャシーがペティコート1枚でジョーを追って来たんです。

ところが暗がりで足元がハッキリ見えず、キャシーは誤って水中に転落。

 

 

キャシーの転落に気づいていたのに、名を呼ぶだけで助ける素振りも見せず、その場から何食わぬ顔で離れて行ったんですよ。

落下は事故であっても、助けを呼ぶ等もしなかったことに悪意を感じます。

 

 

 

死刑宣告

ところがこの話しの面白いところは、ジョーの下半身暴走物語りではなく、キャシーが他殺だと発展していったところなんです。

しかも犯人はジョーではなく、キャシーの不倫相手で配管工のダニエル・ゴードン（ユアン・スチュワート）だ！絶対そうだ！の勢い。

 

現代のようなDNA鑑定や防犯カメラとかがあったら、こんなことにはなってなかったけど、なんせ1950年代って相当昔。

決めつけと印象操作で圧倒的にダニエルは不利。

 

 

自分はやっていないと訴えても、民衆からは「はぁ？あんた何言ってんの？」と反感を買うだけ。

 

そんな理不尽な裁判の傍聴席にちゃっかり座るジョー。

さすがのジョーも、これは見過ごせないと思ったんでしょうか。

名乗る勇気はないけど、事故の現場にいた者としてコソコソ手紙を書き、そっと関係者に忍ばせるのですがどうやらスルーされてしまったご様子。

 

ジョーの手紙虚しく、ダニエルはあっさり死刑を宣告されてしまいました。

 

 

➡関連記事：「疑惑の炎」冤罪なのに死刑執行された実話

 

結局誰も幸せになれない

ジョーはキャシーのこと、彼なりの形で愛してたとは思うんですよね。

薄情で卑怯でクズには違いないし、絶対旦那にしたらダメなタイプだけど（笑）

あの時助けていればって思ったのかな。

キャシーを亡くしたショックはあったかもしれないけど、自分の行動を悔いたり罪悪感に苛まれるような素振りを全く見せなかったんですよね。

取り返しのつかないことをしてしまった！っていう罪悪感を持つまでの時差よ。

次から次へと女性に手を出すことによって、キャシーを思い出してたのかな。

ただの紛らわせ？

人に罪を被せのうのうと生きる側の人間になっても、彼は一生幸せにはなれないはず。

頭の片隅に、ずっとキャシーと赤ちゃんとダニエルがいるだろうな。

 

フワフワと空気のように漂ってて、いまひとつ掴めなかった男ジョー。

 

 

ジョーのキャラクターが強烈で見逃しそうだけど、揃いも揃ってみーんな子どもを軽視しすぎですよね。

エラとレズリーもそうだし、ダニエルも。

そして住み込み先のママも。

全体的にみんなに覇気や活力がなくて、薄幸臭しかしない。

 

これも時代特有なんだろうか？

 

 

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みんなの評価やクチコミ

『猟人日記』をユアン・マクレガー目当てで観ました。
女性の水死体を発見したところから回想と共にストーリーが進むサスペンス。主人公が女にだらしがなくてどうしようも無い男だけど、ユアンがかっこいいので全て良し…という作品でした。 pic.twitter.com/cQdiODP9tQ

— コペ (@co_pen_) March 4, 2023

「猟人日記」
海で下着姿の女性死体引き上げる男。その後次々と女性と関係を持つ。それは実は見殺しにした彼女への罪悪感なのか？女達と関係を持ちながら彼女を、回想していくのは、ろくでなしながらも彼女を思っているのだろうと、私は思う。ユアンの遠目にひきづり込まれます。 pic.twitter.com/lTi4KJBSzM

— 旦開野 (@Sc0n0sciut0) July 28, 2020

『猟人日記』観終わった。灰色の空、青色のトーン、落ち着いた音楽、ユアン演じるジョーが吐き出すタバコの煙、物憂げな視線、ラストに近付くにつれて見え隠れする感情。こういう雰囲気の作品が大好きなので、めっちゃ良かった。体育座りして本を読むユアンが可愛い。カスタードプレイには笑った。 pic.twitter.com/ijLb3aP434

— ちゃむ (@ren__pet) January 14, 2020

「猟人日記」この男は…穴さえあればどの女でもいいのか…？そのだらしのない身の振り方のおかげでそうなったのにやはり人は変わらないし保身のために2人死んでもそのままなのだろうな、悪気はないのだろうけど。物語も映像もずっとグレーのまま続いていく感じ。若く色っぽい頃のユアンがね…いいね… pic.twitter.com/hiLaMq4tjH

— ふ (@kkkkk_gg_) January 29, 2019

 

最後に

若き日の気怠く美しく色っぽいユアン・マクレガーを堪能できる「猟人日記　禁断のエロス」。

救いようのない終始陰鬱な雰囲気が漂っていますが、小説のような世界観と言葉にできない漠然としたモヤモヤ感が味わい深い大人向け作品でした。

スッキリ爽快な後味を求めてる時は不向きですが、ユアン・マクレガーやティルダ・スウィントンのファンの方には是非観ていただきたいですね。