キャリアも家庭も完璧な女性弁護士アンネ(トリーヌ・ディルホム
)が、17歳の義理の息子グスタフ(グスタフ・リンド
)との禁断の関係に堕ちていくデンマーク映画『罪と女王』。
年上女性と若年男性という構図が「ロマンチック」に解釈されがちな社会通念を打ち破り、性の問題における権力構造と責任の「グレーゾーン」に鋭くメスを入れる衝撃作です。
なぜ監督は、このテーマを、観客の倫理観を試すような残酷さで描いたのか。
作品に込められた「家族の秘密」、「自己保身」の真意、そして観客を「能動的な目撃者」にするための仕掛けを徹底解説します。
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映画が生まれた背景:「性的虐待」のグレーゾーンに挑む
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まずは、なぜメイ・エル・トーキー監督はこの衝撃的なテーマを映画化しようと考えたのでしょうか。
「家族の秘密」と「権力」:家庭という名の小宇宙
『罪と女王』公式サイトの監督インタビューによると、この映画の制作の着想は、「家族の秘密」がどのようにして生まれるのかというテーマに強く惹かれたことだそうです。
監督自身、近しい人を亡くした後に多くの秘密が明らかになった経験に基づいているとも話しています。
さらに、家庭という「小宇宙」の中にある「権力構造」と、それに伴う「責任」についても深く探求したかったとのことです。
性別逆転のグレーゾーン:「責任」はどこへ消えるか
制作にあたり、監督と共同脚本家は、弁護士やセラピストに取材を行い、事例や関連資料を綿密に読み込んだといいます。
彼女たちがこの題材を選んだ最大の理由は、「性的虐待の責任論が、性別によって曖昧になる」という社会的な傾向があると感じたからです。
メイ・エル・トーキー監督は、次のように述べています。
視聴者間で議論される「女王の罪」と監督の意図
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観客を「能動的な目撃者」にする意図
メイ・エル・トーキー監督は、観客を「目撃者」にするために、映画の中で「分かりやすい解答を与えない」ことを意図したそうです。
観客自身の「道徳的な羅針盤」や経験を基に、登場人物の行動を解釈する「余白」を残すことで、観客がこの物語に「能動的」に参加するように促しています。
その結果、私たちに、倫理観を突きつける構造になっているようです。
「不快感」が描く、性描写の真意
監督は、「男性が被害者である場合、性的虐待をより寛容に見る傾向があるため、観客が感じる不快感を作り出すために明示的な性描写が必要だった」と、意図について語っています。
さらに、セックスシーンは、当初の「純粋な体の欲求」から始まり、次第に登場人物たちの感情の流れを反映するように象徴的に「進化」していく様を描くことを目指したそうです。
「全てを失う恐怖」が導く残酷な自己保身
アンネの行動を深く突き動かしたのは、彼女自身の「全てを失うことが一番怖い」という告白でした。
彼女は、完璧な家庭とキャリアを守るため、最終的に義理の息子であるグスタフを裏切り、残酷な決断を下します。
この自己保身の姿こそが、タイトルの「女王」が持つ「圧倒的な力と、その女性が犯した罪」という意味合いを強めていると解釈されています。
この結末について、監督は「観客の解釈に委ねている」としながらも、一つの解釈として、アンネは「秘密を守るという目的は果たしたが、その代償として内面が深く傷ついた」結果になったとも示唆しています。
そして、彼女の抱える秘密は「次の世代にまで暗い影を落とす」だろう、と述べています。
私たちが突きつけられる問い
観客や批評家の間では、アンネのキャラクターについて強い議論が巻き起こりました。
アンネを「身勝手で残酷」、「悪魔と化した」と強く非難する声がある一方、批評家からは、「アンネの恐ろしい行動は私たちの内にもあり、私たちは彼女の共犯でもある」という意見も出ています。
アンネが児童保護の専門家であるにもかかわらず、最終的に家族から孤立し追い詰められたグスタフに対して「救済措置を取らなかった」ことが、不倫や嘘以上に残酷な罪であったという厳しい考察もあります。
私たちは、自分の生活が脅かされたとき、アンネのような「保身のための残酷さ」を自分の中に見出してしまうのではないか、という重い問いを突きつけられる映画です。
作品を深く理解する「小ネタ」と「トリビア」
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最後に、この映画をより多角的に楽しむための、いくつかの制作秘話やトリビアをご紹介します。
歴史的快挙の裏側
- 女性監督初の作品賞受賞
メイ・エル・トーキー監督は、デンマーク映画界の著名な女性監督たち(スサンネ・ビア監督やロネ・シェルフィグ監督など)も成し得なかった、デンマーク・アカデミー賞作品賞を女性監督として初めて受賞しました。 - 国際的な評価
本作はサンダンス映画祭で観客賞を受賞したほか、アカデミー賞国際長編映画賞のデンマーク代表作品に選ばれるなど、数多くの映画賞を席巻しました。
映像美と演出の秘密
- 美術と自然のコントラスト
アンネが暮らす邸宅は、「洗練された白い内装」や「ガラス張りのモダンな外観」で描かれていますが、これは周囲の「自然(森)」と対比されています。監督によると、この対比は、アンネの「動物的な行動」や、文明社会における「階級」を強調する役割を果たしているそうです。 - 『アリス』が鍵

アンネが幼い娘たちに読み聞かせる本として、ルイス・キャロルの『不思議の国のアリス』
が登場します。監督は、アリスが「ウサギの穴に落ち、ルールが絶えず変わる」というテーマを、映画全体の「視覚的な鍵」として取り入れたと述べています。 - 音楽の暗示
劇中、アンネが一人で踊るシーンで、ソフト・セル(Soft Cell)の「Tainted Love」(汚れた愛)が使用されています。この曲の歌詞(汚れた愛を終わらせようとして一方が逃げ出す)が、アンネが陥った関係を暗示しているという意見もあります。
キャストの徹底した役作り
- トリーヌ・ディルホムの役作り

主演のトリーヌ・ディルホム は、役作りのため、撮影中一日中ハイヒールを履き、毎週ネイルを整えていたそうです。また、彼女は「目を閉じていても家の中を動けるように、撮影に使った家を隅々まで理解しようと努めていた」とのことです。 - グスタフ役の準備

義理の息子グスタフ役のグスタフ・リンド
は、撮影前に共同脚本の着想源となったギリシャ神話の「フェドラの物語」を読んで役作りを行ったそうです。
まとめ
正直、私も映画を観た後「えっ!どういうこと?」「大人たちがえぐすぎる!」って、モヤモヤが止まらなくなったんですよね。
1回視聴しただけなのに、いつまでも脳裏にこびりついているんです。
『罪と女王』は、私たち世代の女性が「全てを失う恐怖」に直面したときの人間の生々しい本質を描いています。
キャリアも家庭も完璧だったのに、たった一つの欲望で崩れ去る。
その残酷さに、強く心を揺さぶられます。
トリーヌ・ディルホムの演技は、鳥肌モノですよ。
観る人の倫理観を試す、北欧発の衝撃作。
このモヤモヤを、ぜひ体験してみてくださいね。
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