ギレアドの深奥へ:ファンが知らないHulu『ハンドメイズ・テイル/侍女の物語』裏方秘話
テレビ史に残るHuluの傑作ドラマ『ハンドメイズ・テイル/侍女の物語』。
その強烈な世界観は、緻密に計算された裏方スタッフの仕事によって創り上げられました。
赤と白の鮮やかなコントラスト、不気味なほどに整った街並み、そしてキャラクターの心模様を映し出す細かな美術。
この記事では、シリーズファンでもあまり知らないかもしれない、衣装、美術、撮影現場にまつわる驚きのエピソードを紐解いていきます。

作品に込められた制作陣の情熱と工夫を、ぜひ最後までお楽しみください。
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まさか、服にこんな秘密が?色の意味と隠されたメッセージ
『ハンドメイズ・テイル/侍女の物語』の衣装は、キャラクターの運命、気持ち、そしてギレアドという社会の階級をはっきりと物語る「もう一つの皮膚」です。
衣装の細部には、ナタリー・ブロフマンやアネ・クラブツリーといったデザイナーたちの深い考えが込められています。
赤・青・緑・茶…色が教えるギレアドの身分
デザイナーたちは、原作の描写を参考にしながら、色に深い意味を込めました。
侍女たちの「赤」
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血や子どもを産む能力を象徴する赤は、侍女たちが持つ唯一の「価値」を視覚的に表現しています。
しかし、この色は同時に、情熱、力、勇気といった二つの意味を持っています。
ギレアドは彼女たちを管理しようとこの色を与えましたが、皮肉なことに、この色が抑圧された女性たちの抵抗の象徴となりました。
白い帽子(ボンネット)は、視界を制限し、顔を隠す「真っ白な仮面」の役割も果たしています。
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これにより、彼女たちは個性を奪われ、単なる「道具」として扱われていることを示しています。
アネ・クラブツリーは、この侍女の不格好な茶色のストッキングに、自身が幼い頃に経験した人種差別への思いを込めていると語っています。
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司令官の妻たちの「ピーコックブルー」
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聖母マリアのガウンをイメージしたこの色は、一見すると崇高な印象を与えます。
しかし、デザイナーたちは、この色が持つ「従属」「悲しみ」といった意味合いにも注目しました。
夫に愛されず、子を持つこともできない妻たちの不幸な運命を、この美しいながらも冷たい色が表現しているのです。
シーズン5以降にこの青がより明るい色合いになったのは、ギレアドが国際社会に「開放的な顔」を見せようとするストーリー展開に合わせてのことでした。
司令官たちの「黒」と「タフテッド」
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司令官たちの黒いスーツは、権威と権力を象徴する色です。
しかし、そのスーツには、権威主義的なイメージとは対照的に、柔らかな質感の「タフテッド」と呼ばれるデザインが施されています。
これは、彼らが「指導者」であると同時に、「家庭を築く男」というギレアドの価値観を表現するためのものです。
エコノワイフの「混色」
エコノワイフは、ギレアドの貧しい家庭の妻で、侍女・妻・マーサの役割をすべて兼ね備えています。
彼女たちの衣装は、これら3つの階級の色(赤・青・緑)が混ざり合った、くすんだグレーや茶色です。
これは、彼女たちがどの階級にも属さず、すべての役割を担っていることを象徴しています。
マーサたちの「マットグリーン」
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緑は自然や癒しを象徴する色。
家事だけでなく、子育てや看病も担う女中たちには、この色がふさわしいと選ばれました。
おばたちの「茶色」
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茶色は、第一次世界大戦時のアメリカ陸軍の軍服を思わせます。
ギレアドに貢献するおばたちの権威を象徴すると同時に、彼女たちが体制の「兵士」であることを示唆しています。
ナタリー・ブロフマンは、リディアおばの過去の衣装に、軍服を思わせるオリーブ色の緑を使い、彼女が将来ギレアドのおばになることを示唆する、細やかな演出を施しています。
ジューンとセリーナの服に隠された、驚きの工夫
『ハンドメイズ・テイル/侍女の物語』の衣装は、一見すると単なる役割分担を示す記号のように見えますが、細部にはデザイナーたちの巧妙な工夫が凝らされています。
特に、主人公ジューンと、重要な登場人物であるセリーナ・ジョイの衣装には、彼女たちの内面や物語の展開を象徴する、ファンも気づきにくいディテールが隠されています。
侍女たちの個性を表す小さな工夫
侍女たちの赤い制服は、一見画一的に見えますが、実は各キャラクターにわずかな個性が与えられています。
デザイナーのアネ・クラブツリーによると、各侍女には標準外の赤い古着アイテムを一つ選ぶことが許されていました。
ジューンが身につける赤いプルオーバー、エミリーの赤い肩掛け、アルマにはポケット付きの長い赤いカーディガンなどがその例です。
これは、完全に個性を奪われたギレアドにおいても、彼女たちがわずかな「自分らしさ」を保ち、抵抗の意思を静かに燃やしていることを示唆しています。
セリーナの心理を映し出す衣装の変遷
一方、司令官の妻であるセリーナ・ジョイの衣装も、彼女のキャラクターアークに合わせて細やかに変化しています。
初期のシーズンでは、彼女の憂鬱な心理状態を反映して、青色のトーンは深く、沈んだ印象を与えます。
しかし、物語が進むにつれて、特に彼女が権力を握ろうとする時期や、自信を取り戻していく過程では、衣装の色合いが微妙に明るさを増し、仕立てにもわずかな変化が見られます。
特筆すべきは、セリーナの結婚式のドレスです。
この衣装には、夫フレッドの軍服の要素が取り入れられ、彼女の野心や権力への願望が示唆されています。
また、ダイアナ妃にインスパイアされた長いトレーンは、彼女の社会的な地位への意識を表しています。
さらに、新しい家族(セリーナ、ウォートン司令官、赤ちゃんノア)を表す3枚の葉っぱのディテールが刺繍されている点も、彼女の複雑な感情を象徴しています。
シーズン終盤で、再び妻の役割に戻ることを示すために着用した氷のような青色の衣装は、彼女の内に秘めた冷たささえ感じさせます。
このように、ジューンとセリーナの衣装には、言葉だけでは語られない、彼女たちの内面や物語の重要な瞬間を視覚的に伝えるための、デザイナーたちのきめ細やかな配慮と隠されたメッセージが込められているのです。
まるで見張られているみたい…美術とセットの怖い秘密
『ハンドメイズ・テイル/侍女の物語』の美術は、ただの背景ではありません。
それは、登場人物を閉じ込めるギレアドという監獄そのものです。
美術担当のジュリー・バーグホフは、その世界観を物理的に作り上げる上で重要な役割を担いました。
「目の虹彩」が繰り返される視覚的テーマ
美術デザイナーたちは、「常に監視されている」というギレアドの考え方を視覚的に表現するため、「目の虹彩」を繰り返されるテーマとして取り入れました。
侍女たちが円形に配置されたシーンや、棺桶が円形に並べられたシーンなど、番組のあちこちにこのモチーフが散りばめられています。
視聴者は無意識のうちに、ギレアドの監視の目にさらされているような感覚を覚えるのです。
セットに隠されたブルータリズムの哲学
殺風景で無機質な空間
ギレアドの建物は、ロシアや北朝鮮などの独裁的な政権の建築様式であるブルータリズムからインスピレーションを得てデザインされました。
コンクリートの壁、無機質な内装、無駄をなくしたデザインは、人間性を排除したギレアドの思想そのものを表しています。
コロニーの二重性
強制労働収容所であるコロニーの描写は、福島原発事故のような環境災害や、世界の様々な国の奴隷環境から着想を得ています。
しかし、同時にオランダ絵画のような牧歌的で美しい自然とのコントラストが、恐怖を際立たせています。
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コロニーの家具や建物には、軍のベッドや毛布がリサイクルされており、ギレアドの「資源の無駄遣いをしない」という考え方が反映されています。
セットに込められた細やかな物語
ジューンの寝室の色の秘密
ジューンの寝室の壁の色は、当初予定されていた白ではなく、青みがかったグレーに変更されました。
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これにより、窓から差し込む光の色が変わることで、狭い空間でも常に異なる印象を与えることができ、観客に彼女の心の微妙な変化を伝える効果を生み出しました。
エコノビレッジの内装
エコノビレッジのミニマリストな内装は、キリスト教の教派であるメノナイトの生活スタイルから着想を得ていました。
機能的で禁欲的なコミュニティの姿を表現するために、木製の家具、手作りの品々、パン、牧歌的な風景の絵画、そしてプロパガンダで飾られていました。
ギレアドは実在した?撮影現場の驚くべき真実
『ハンドメイズ・テイル/侍女の物語』の舞台はアメリカ、マサチューセッツ州ボストンですが、その不気味な世界観のほとんどは、実はカナダのオンタリオ州で撮影されました。
制作陣は、トロントをはじめとするカナダのありふれた街並みを、緻密な工夫によってギレアドへと変貌させていったのです。
日常風景に潜む恐怖:カナダの街がギレアドに
トロント
ギレアドの主要な施設はトロントで撮影されました。
セント・エイダン教会は侍女たちが教えを受ける不気味な「レッドセンター」に、豪華なフェアモント・ロイヤル・ヨーク・ホテルは性的搾取の場「イゼベル」の舞台となりました。
さらに、トロント大学は政府施設や病院として、トロント市庁舎はリディアおばが教えを説く場として利用されています。
また、ウッドバイン・ビーチは、吊るされた遺体の「壁」という恐ろしい光景に変わりました。
ケンブリッジ
古風な建築が残るこの街は、ギレアドの象徴的なシーンを数多く生み出しました。
メインストリート橋やクイーンズスクエアは、侍女たちが隊列を組んで歩く印象的なシーンに登場します。
また、中央長老教会は儀式を行う重要な場所として、地元のファーマーズマーケットは不気味な雰囲気の街角として描かれました。
ハミルトン
ウォーターフォード司令官夫妻の自宅として使われたのは、ハミルトンにある1893年に建てられた歴史ある美しい邸宅「ザ・グランド・デュランド」です。
Liuna駅は、ジューンの幸せな過去の回想シーンや、トラックで連行されるシーンで登場します。
そして、ボストンの象徴であるフェンウェイパークでの大量処刑シーンは、ハミルトンのバーニー・アーバー・スタジアムで撮影され、CGで本物のフェンウェイパークと合成されるという驚きの工夫が凝らされました。
「牛乳風呂」の秘密
ジューンが入る美しい牛乳風呂のシーンは、実際は無糖バニラソフトと水の混合物でした。
主演のエリザベス・モスは、その中で12時間過ごしたことについて「ただ泳いでいただけ、本当に楽しかった!」とコメントしています。
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その他
反逆者が強制労働させられる「コロニー」のシーンや、ジューンたちが地下抵抗組織を介して逃走する場面は、アックスブリッジの田園地帯や森林で撮影されています。
また、ナイアガラ・オン・ザ・レイクは、シーズン1で恐ろしいショッピング地区として描かれました。
このように、私たちの知る日常の風景が、撮影クルーの手によって「ギレアド」という架空の恐怖に変えられていたのです。
現実とフィクションの境目を曖昧にする、緻密な舞台裏の努力がうかがえます。
撮影技術と社会情勢のシンクロ
カメラワークが語る物語
ギレアドの現代シーンでは、スタンリー・キューブリック監督のようなフォーマルで対称的な構図が多く使われ、登場人物の孤立感が強調されています。
一方、プレ・ギレアド時代の回想シーンは、手持ちカメラによるシネマ・ヴェリテのスタイルで撮影され、自由で感情的な雰囲気を表現しています。
撮影監督のコリン・ワトキンソンは、リード・モラーノ(監督兼エグゼクティブプロデューサー)と協力し、美術デザイナー、衣装デザイナーと密に連携して、作品の視覚的な世界観を構築しました。
政治との偶然の一致
ドナルド・トランプ政権の誕生や「#Me Too」運動など、実社会の出来事がドラマの脚本に偶然にも一致することが度々ありました。
しかし、制作陣は、作品と現実との関係性の解釈は視聴者に任せるという姿勢を貫きました。
ジューンが隠れるボストン・グローブ新聞社の本部跡地は、フリープレスへのギレアドの攻撃を象徴する場所であり、当時の政治情勢を強く反映したメッセージが込められています。
まとめ:『ハンドメイズ・テイル』が残した遺産
『ハンドメイズ・テイル/侍女の物語』は、ただのドラマではありませんでした。衣装や美術、撮影現場。裏方の仕事ひとつひとつが、ギレアドという世界を現実のものにしました。
侍女たちの赤いケープは、いつしか現実の抵抗の象徴に。
この作品はフィクションを超え、社会に深く根付いたのです。
正直、これほど緻密な工夫があったとは驚きです。
ギレアドは、私たちの世界にも潜む可能性を警告し続けているのかもしれませんね。
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【参考・情報源】
- Bringing The Handmaid’s Tale To Life
- Where was The Handmaid’s Tale filmed? Guide to ALL the Locations
- Costumes Of The Handmaid’s Tale – An Interview with Natalie Bronfman
- 海外ドラマ『ハンドメイズ・テイル』7つのトリビア――「原作ではモイラは白人で、エミリーは名無し」「ジェーンの部屋に隠された意味」
- The Handmaid’s Tale: Rules of Engagement
- Where was The Handmaid’s Tale filmed? A tour of the show’s dystopian locations
- 海外ドラマ「ハンドメイズ・テイル/侍女の物語」主演女優エリザベス・モスから日本の視聴者へメッセージ! シーズン2撮影の舞台裏が垣間見えるメイキング画像が公開など
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