今回ご紹介するのは2011年のスペイン映画「バスルーム 裸の2日間」(原題:Madrid, 1987)。
当初予想していた内容とは全然違う!素っ裸でバスルームに閉じ込められた年の差男女は一体どうなるのか!?
ちなみにHuluでは、ほぼ全裸場面にも関わらず【大人向け】【R指定】表記は無し。
ちょいちょい映る下半身にはガッツリとモザイク処理されていました。
あらすじ
1987年、マドリッドの暑い夏。著名なジャーナリストでありながら、年老いてすっかり情熱を失くしたミゲル。彼はインタビュー取材のため、カフェで仕事をしながら相手を待っていた。取材をしに現れたのは、ジャーナリスト志望の女子大生、アンヘラ。彼女と美貌と若さに一目で心を奪われたミゲルは、彼女を部屋へと誘い込む。キスをしようとしたり、服を脱ぐよう要求したり、彼の言動に戸惑うアンヘラ。そして、ひょんなことから二人は裸のまま、狭いバスルームに閉じ込められてしまう。完全に閉鎖された空間で、親子ほどに年の離れた二人の関係が徐々に変わっていく。
【Huluより引用】
予告編
登場人物・キャスト
アンヘラ
María Valverde in Madrid, 1987 (2011) pic.twitter.com/zLcAZB6NKn
— Frame Found (@framefound) May 28, 2022
✅演:マリア・バルベルデ
✅役:ジャーナリスト志望の女子大生
【出演作】「ガルヴェストン」(2018)/「欲望に溺れて」(2017)/「切り裂き魔ゴーレム」(2016)/「エクソダス:神と王」(2014)/「リベレイター 南米一の英雄シモン・ボリバル」(2013)/「その愛を走れ」(2012)/「空の上3メートル」(2010)など
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ミゲル
✅演:ホセ・サクリスタン
✅役:アンヘラが憧れるベテランジャーナリスト
「ザ・レイジ 果てしなき怒り」もマリオ・カサス出演してるね。
見どころ
邦題やサムネ、あらすじに騙されることなかれ!
実はほぼバスルームの場面しか出て来ない会話劇で、単なるエロ前面押しではないのです。
意外というか肩透かしというか(笑)
ベテランジャーナリストのミゲルの変態願望と欲望を、一方的に若いアンヘラに押しつける流れかと思ってたけど全然違いました。いや、ちょっと当てはまってるっちゃ当てはまってる?
- ユニークな設定
うっかり素っ裸の2人がバスルームに閉じ込められるという斬新な設定。ここでどんなことが繰り広げられるのか、視聴者の想像力も掻き立てられる。
- マリア・バルベルデの美しさ
女子大生アンヘラ役のマリア・バルベルデの幼さと大人の色気を感じる表情には、同性でもドキッとするやも。
- ミゲルの膨大なセリフと口説き文句
何としてでもアンヘラと肉体関係を持ちたい老いたジャーナリストのミゲルが、言葉の力で口説き落とそうとする前半は特に印象的なセリフが多い!経験と知識が豊富で、想像力と表現力も豊かなミゲルの息をするようにしゃべり続ける膨大なセリフに惹き込まれてしまう。
【ネタバレ】感想
「バスルーム 裸の2日間」って邦題ですぐ思い出したのが、2015年の「愛の部屋、裸の2日間」。
正直この手のタイトルって釣り率が高くて、いろんな意味で期待を裏切ってくれることが多いんですよね。
そういう意味でも、「これはどう勘違いさせてくれるのか!?」と変な好奇心で観てしまいました。ヒネクレテルー
なんせミゲルのセリフ量が多い
うーん。邦題のセンスには泣けるけど確かに嘘はついてない。
でも単なるエロティック系とは違うし、随分深みのある会話劇じゃないかい。
ただその量が多いし、言うても頑固ジジイの説教染みた話しメインで愉快じゃないんですよね。
こんな状況やのにどんだけしゃべんねん!黙ってくれ!って思うくらい、口数少なめなアンヘラとは対照的にしゃべりっぱなし。
ミゲルははじめから正直だった
そもそもアンヘラは、尊敬する大先輩ジャーナリストのミゲルに文章の書き方を教えてもらいたかっただけで、パパ活目当てでもない。
下心なんて持ってなかったんです。多分
だって年上の男性と言うには年が離れすぎてるし、マッツ・ミケルセンみたいなイケオジでもない。
親子ってより孫って言ってもいいかも?
そりゃそんな展開になるなんて予想もしないでしょうよ。
なのにミゲルはアンヘラの文章ではなく体目当てで、カフェで会って数分でセクハラ発言やボディタッチあり。
ミゲルの顔は世間に知られていて、サインを求められたり落ち着かない。
だから友人から借りたアトリエに移動しようと、アンヘラを誘い出しました。
セクハラジジイだと分かってしまったら、文章について教えてもらうのは、タダでは無理だと思ってまう。
ジーンズとミゲルのゴリラ
薄汚いアトリエに着くとお酒を少し飲まされ、早速グイグイ距離つめてキスして来るのです。
だけどこれだけじゃ満足できない。
ミゲルは次に「服を脱いでくれ」と要求するんですが、アンヘラは拒否。
するとタバコを吸いながら
おっ…おう。
そうか、目覚めたのか。
真顔でこんなこと言われても、こっちは真顔で聞いてられない。
ゴリラて!ミゲルの言い回しが面白くて、ここから老害っぷりを更に発揮するかも!?とワクワクしちゃったね。
青い絵の具と壊れたドア
で、ここから何をするのかと言うと、何故かベッド横に置いてあった青の絵の具を指につけて、アンヘラの胸周りや背中にスーッとつけ始めるんです。
ミゲルの脳内にはどんな世界が広がってるのでしょうか。
さすがにアンヘラも「正気じゃないわ」と、絵の具を洗いにバスルームに入ったのが運の尽き(笑)?
釣られて全裸になってバスルームに入って来たミゲルが、バスルームの鍵が壊れてることを知らずにドアを閉めて閉じ込められてしまいました。
ゾッとするけど水とトイレはあったのが救いだな。
欲と雑念
最悪ぅー!裸で好きでもない人と閉じ込められるなんて!
アンヘラは家族にミゲルと会うとは言ってないし、ミゲルもこんな状況だとスキャンダルになるし、妻にもバレる。
イライラが爆発して尊敬の念も失い言い争いになるのか?なんて思ったけど、これが意外にもならない。
少々の混乱とイラ立ちを見せるも比較的2人共冷静で、「シェイクスピアならどうする?」と文学的な話しになるんです。スゲー
会話の中で、実はアンヘラの軍人の父や姉とミゲルが知り合いだったことも分かったよ。
ミゲルはアンヘラとどうにかなりたい!と願う一方、軍人であるアンヘラの父に殺されかねないとか、スキャンダルで公私共につぶれるかもしれないと雑念と葛藤します。
ようこそ、ミゲルの世界へ
名言なのかはさておき、独特な表現のオンパレードに字幕を必死で追いましたよ。
特に終盤のアンヘラの同級生が自死した話しを聞いたミゲルの返しや行動は、なかなかできるもんじゃないなと。
ここはジャーナリストとしての経験と物書きとしての技量が色濃く出たなと。
バスルームにあったただの額縁をスクリーンに見立て、即興でミゲルが物語を語り出す。もちろんフレーム内に映像はないけど、想像力で補完して2人には画が見えてるんだろうな。
癖強めですがミゲルワールドを堪能したい方は、アンヘラの美しさで中和しつつ堪能してください。
過去の経験を皮肉たっぷりに説教くさく話す人は好きにはなれませんが、豊富な経験を積んだミゲルの人生や性欲との向き合い方(捉え方や表現)が非常に興味深かったです。
面白いとは言えないけど、つまらないわけでもない。
あっと驚く展開でもないし、特別激しい絡みがあるわけでもない。
でももう1回観てもいいかも?と思うくらい、偏屈なミゲルの話しには「奥」があるように感じました。
ラストはどう解釈した?
アトリエの持ち主が気づいて無事に脱出できたアンヘラとミゲル。
ドアが開いた途端、言葉も交わさずそそくさと服を着て逃げるように帰って行ったアンヘラ。
慌てていたのか、眼鏡とファイルを忘れてったんです。
「あとで返してやれ」と言う友人に「必要なら来るさ」と返したミゲル。
さてアンヘラは取りに戻って来るんでしょうか。
ミゲルからアンヘラに連絡するんでしょうか。
みなさんはどう感じたかな?
気になったのはアンヘラが忘れてったファイルをミゲルが開いた場面。
中には数々の切り抜いた新聞記事が貼られていて、ミゲルのコラム(タイトルは「明日」)もあったんです。
アンヘラにはとっても大切なファイルだったと思うけど、取りには来ないだろうなって感じました。
ミゲルに会いたくない、接触したくないってことより、もう必要なくなったんじゃないかなと。
今回の経験にアンヘラは傷ついた部分もあっただろうけど、何か得るという意味では大成功したんじゃないかな。
一皮むけた的な、人としても物書きとしても成長し前を向いて歩いて行くんだろうなって気がしました。
ところでストーリーとは関係ないけど(?)、アトリエを出た後の歩くアンヘラの映像、背景の合成が安っぽすぎて残念!
何か事情があったのかもしれないけど、もうちょっと自然なものにできなかったのかなぁ。
【ネタバレ】みんなが気になるあのこと
深みのある会話劇が~とか言いつつ、結局本作で気になるのは
「やったのか」「やらなかったのか」
ですよね(笑)
セリフ量としては断然ミゲルの方が多いけど、繊細な表情の変化が見られたのはアンヘラ。
ハッキリと言葉には出してないけど、途中アンヘラの気(態度)が変わり、1時間を過ぎたあたりでついに関係を持ってしまいました。
膨大な言葉を浴びせたわりには、この場面は結構アッサリ。
なんとなく互いに背徳感でいっぱいだったような。
とにかくマリア・バルベルデが魅力的すぎる作品。
同性から見ても嫌味や変なイヤラシサを感じない、健康的な美しさに好感が持てました。
化粧っ気も飾り気もない、作り込まれた美しさじゃなくピュアなのが良き!
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